2018年8月5日日曜日

椎間板症のリハビリ治療

椎間板症のリハビリ治療

椎間板症(Intervertebral disc disease)のリハビリ治療に関して、わかりやすく解説していきます

椎間板の概要

椎間板(椎間円板)
椎間板とは、椎骨と椎骨の間に位置する円形の線維軟骨で、上下の椎骨に加わる衝撃を吸収するクッションの役割を持ちます。
立位姿勢においては、脊椎にかかる荷重の約80%を椎間板が受け止めており、残りの20%を椎間関節が担っています。
椎間関節と軟骨関節
椎間板という弾力性のある組織を介在することにより、上下の椎骨は僅かな範囲ですが自由に動くことができます。
そのため、椎体後方の椎間関節と合わせて、椎体同士の軟骨関節が脊椎の可動性を実現するためには非常に重要です。
上位腰椎では椎間板の前面と後面はほぼ同じ高さであるのに対して、下位腰椎では前面の高さが後面の約2倍の高さとなります。
これは、前面を高くすることで前方部分への圧を減らし、さらに腰椎の前弯を構成するための大切な要素となっています。
椎間板の支配神経|脊椎洞神経
椎間板は、外側の線維輪と中心部の髄核から構成されます。
通常、軟骨組織には神経はありませんが、椎間板の線維輪浅層に関しては脊髄神経前枝(脊椎洞神経)からの支配を受けています。
そのため、椎間板が障害を受けることで腰痛が発生することになります。

椎間板症で痛みが出現する場所

椎間板が疼痛の原因組織である場合は、腰部の中央に両側性の痛みとして現れ、障害部位から遠位にかけて放散します。
椎間板に対して徒手的にストレスは与えられないため、体表からの圧迫で腰痛を再現することはできません。
椎間板症は疼痛部位を尋ねると「この辺り」と手のひらを置いて場所を限局できないのに対して、椎間関節障害の場合は「ここ」と指先で示すことができることが特徴です。
腰痛が両側性(脊髄神経前枝)か片側性(脊髄神経後枝)かで原因が異なりますので、以下の表を覚えておくと臨床でも役立ちます。
片側性両側性
筋・筋膜性腰痛椎間板症
椎間関節障害骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折
コンパートメント症候群

椎間板性疼痛の好発年齢

椎間板が原因の腰痛は、椎間板が変性してくる中高年に多い傾向にあります。
若年者と高齢者で腰痛の原因は大きく異なりますので、以下の表を覚えておくと非常に役立ちます。
若年者高齢者
椎間関節障害椎間関節障害
筋・筋膜性腰痛筋・筋膜性腰痛
椎間板ヘルニア骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折
成長期分離症腰椎変性すべり症
コンパートメント症候群

椎間板以外の問題について

腰痛患者で診断名に椎間板症と付けられるケースは非常に多いですが、実際に椎間板が腰痛の主な原因組織であることは少ないです。
これは膝関節の半月板損傷と同じであり、実際は膝蓋下脂肪体が原因で痛みを誘発していることのほうが圧倒的に多いのと似ています。
椎間板はあくまで加齢に伴って変性する(潰れる)ことがわかっている組織であるため、痛みを強く誘発するような構造をとりません。
ただし、椎間板が潰れると椎体間のクッションがなくなるため、椎間関節への負担が増加し、脊椎の動きも非常に不安定となります。
そうすると椎間関節障害や腰椎変性すべり症、脊椎圧迫骨折など、あらゆる問題へと波及することにつながります。

椎間板の変性を予防する

座位前屈の椎間板内圧
椎間板の変性は遺伝的な要因も関わっていますが、基本的には加齢的変化であり、1度変性したものを改善させることはできません。
そのため、椎間板症の治療というのは困難であり、さらなる変性を起こさないように患者自身が予防的観点を持つことが重要になります。
具体的には、椎間板内圧が上昇する動作を長時間にわたって続けることは避けるように心がけます。
また、重量物を持ち上げるような仕事をしている方では、荷物を持つときに脊柱の後彎化を最小限にするような動作指導を行います。

椎間板症と腰椎不安定症

椎間板が変性することで脊椎が不安定になることは前述しましたが、それによって椎間関節性疼痛が増加します。
椎間関節性疼痛とは、具体的には関節包や脂肪組織などが正常な動きから逸脱してインピンジメントを起こすことに起因します。
関節が不安定な状態であるために、くしゃみや咳で腰に響いたり、腰部を動かした際に急激な痛みが生じることになります。
腰痛に対して脊柱の安定化トレーニング(コアトレ)が推奨されているのは、緩衝材を失って不安定となった動きを深層筋で補うためです。

リハビリテーションの考え方

椎間板症のリハビリを考えるうえで、変性した椎間板は治らないこと、さらなる変性を予防することが臨床では重要です。
例えば、L5/Sの椎間関節に拘縮が存在している場合は、腰椎を屈曲した際に隣接関節であるL4/5が過剰に動いて代償します。
そうするとL4/5間の椎間板には過剰なストレスが加わることになり、他よりも変性しやすくなることが予測されます。
そのため、立位にて体幹前屈テストを行う際は、ひとつひとつの脊椎の動きが過剰または不足していないかを確認することが重要です。

腰椎の適度な前彎を保つ

立位姿勢においては、脊椎にかかる荷重の約80%を椎間板が、残りの20%を椎間関節が担うことは前述しました。
ただし、脊椎が屈曲した場合は椎間板の負担割合が増え、伸展した場合は椎間関節の負担割合が増えることになります。
正常では、腰椎は前彎をとるため、腰椎は伸展位となり、椎間板への負担は大きくならないような構造をとっています。
それが腰椎の前彎が減少している患者では、椎間板の負担が増えるために、徐々に椎間板が変性して腰椎の後彎化が進行していきます。
そのような悪循環に陥らないためにも、腰椎の前彎を獲得することが重要となります。
具体的な方法としては、腰椎を生理的前彎位に保持した歯性から、脊柱起立筋と腸腰筋(大腰筋)の筋力強化を行います。
腰椎前弯下での腸腰筋訓練

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