筋膜性腰痛症のリハビリ治療
筋膜性腰痛の概要
筋膜は全身を包んでいる膜状組織であり、そのどこかに高密度化が発生すると、高密度化している場所または離れた場所に痛みを起こします。
筋膜が原因で起こる腰痛の特徴は、①片側性(まれに両側性)、②若年者から中高年者まで発生、③痛みに波があるの3つです。
例えば、下腿三頭筋に高密度化が存在しており、腰部の椎間関節に関連痛を起こしている場合は、下腿に筋膜が引っ張られた状態になります。
引っ張られている方向とは反対側に筋膜を伸張すると、椎間関節包への牽引ストレスが消えるため、痛みを軽減することができます。
効果を判定するためには運動検査が有用で、例えば、立位前屈時に腰痛が発生するなら、筋膜リリース後に疼痛や可動性がどう変化するかをみます。
もしも筋膜リリースを高密度化が存在する方向に行なった場合は、椎間関節包への牽引ストレスが増悪するため、痛みを増強が起こります。
問題の根源となっている高密度化が存在している場所は、筋膜への伸張操作と運動検査を同時に行いながら検査していくとよいです。
疼痛や可動性が切り替わる場所が、高密度化が発生している場所として予測することができます。
高密度化に対しては筋膜マニピュレーションが有効で、圧迫と振動刺激を加えることで、筋膜のねじれを解きほぐすことができます。
この治療が完結しないことには疼痛が消失することがなく、日によって波がある状態が続くことになります。
筋膜リリースの方法
筋膜リリースは前述したように検査に用いることも可能であり、筋膜マニピュレーション後の伸張操作(ストレッチ)としても有用です。
方法としては、手指や手根部で皮膚を軽く圧迫した状態から、筋膜が高密度化している部分とは反対方向に伸張していきます。
そこから90〜180秒(長くて5分間)ほど待つことで、粘っこいゲル状の感覚から、さらさらなゾル状の感覚に変化するまで待ちます。
その感覚が膠原線維がほどけた(リリースされた)状態であり、それが筋膜リリースを終了する合図になります。
筋膜マニピュレーションの方法
治療対象となる深筋膜の厚さは約1㎜で、斜め・縦・横方向の3層構造になっており、それぞれの方向へ柔軟に動きます。
しかし、高密度化(膠原線維と弾性線維がからみついた状態)が起きていると、その部位の筋膜に硬さと滑りにくさが感じられます。
その高密度化した部分を効果的に解きほぐすことができる方法が筋膜マニピュレーションであり、筋膜の構造に着目した治療法になります。
方法としては、硬くて圧痛のある部位に対して徒手圧迫を加えながら上下・左右・斜めに細かく動かしていきます。
痛みは10段階で7〜8ほどで訴える場合が多く、その痛みが半減するまで圧迫と振動刺激を継続していきます。
通常は約4分ほどで半減し、手にも筋膜が緩んだ感覚が伝わってくるので、それが筋膜マニピュレーションを終了する合図になります。
正しく治療できている場合は、治療直後に症状が一時的に改善し、そこから2日ほどの炎症が起きて痛みます。
4日後には炎症が落ち着いて筋膜の高密度化も解けた状態なので、以前よりもかなり軽くなっているのを実感できるはずです。
筋膜の主要ライン①:SBL
SBL(スーパーフィシャル・バック・ライン)は身体の屈曲系を制限する筋膜で、立位前屈で痛みが発生する場合に異常が疑われます。
仙結節靭帯やアキレス腱移行部に高密度化が起こりやすく、問題がある場合は押圧することで関連痛(普段の痛み)を再現することができます。
筋膜の主要ライン②:DFL
DFL(ディープ・フロント・ライン)は身体の伸展系を制限する筋膜で、立位後屈で痛みが発生する場合に異常が疑われます。
大腰筋や腰方形筋に高密度化が起こりやすい傾向にあります。
筋膜の主要ライン③:LL
LL(ラテラル・ライン)は身体の側屈系を制限する筋膜で、立位側屈で痛みが発生する場合に異常が疑われます。
外腹斜筋や腰方形筋に高密度化が起こりやすい傾向にあります。
筋膜の主要ライン④:DFL
DFL(ラテラル・ライン)は身体の回旋系を制限する筋膜で、体幹回旋で痛みが発生する場合に異常が疑われます。
大殿筋や広背筋に高密度化が起こりやすい傾向にあります。
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