腰椎椎間板ヘルニアのリハビリ治療
腰椎椎間板ヘルニアの概要
腰椎椎間板ヘルニアは、椎間板の髄核や線維輪が後方に膨隆または脱出することにより、神経根や馬尾を圧迫し、神経症状を引き起こす疾患です。
人口の約1%が罹患するといわれ、手術患者は人口10万人あたり年間46.3人、好発年齢は20-40歳代で、男女比は2:1で男性に多いです。
椎間板は加齢に伴って扁平化していき、髄核の水分も減少して動きがほとんどなくなるため、高齢者では発生頻度が低くなります。
椎間板ヘルニアが後方に起こる理由として、前方は幅広く前縦靭帯に覆われていること、椎間板は後方のほうが構造的に弱いことが挙げられます。
椎間板ヘルニアの患者では、MRIで以下のような画像所見となります。
矢状面からみた画像 | 水平面からみた画像 |
腰椎椎間板ヘルニアの発症要因
発症要因として、重労働や喫煙習慣が挙げられます。
また、遺伝的要因(先天的な発症しやすさ)の関与も報告されており、とくに若年者の発症ではその傾向が強いようです。
腰椎椎間板ヘルニアはぎっくり腰(急性腰痛症)の既往が複数回ある場合が多く、その関係性についても指摘されています。
主な原因としては、椎間内圧の高まりによって、椎間内に位置する椎間板(髄核と線維輪)が潰れて後方に飛び出してくることが原因となります。
そのため、中腰姿勢での作業や不良姿勢でのデスクワークなど、椎間板内圧を高める姿勢は避けることが大切です。
腰椎椎間板ヘルニアの好発部位
椎間板ヘルニアは腰椎の4番目と5番目の間(L4/L5)と腰椎の5番目と仙骨の間(L5/S1)に発生しやすく、両者で全体の95%を占めます。
一般的にL4/L5のヘルニアでは、下位であるL5の神経根が圧迫されることになります。
ただし、外側ヘルニアの場合は上位の神経根(L4)が圧迫を受けます。
健常者においても椎間板の変性を認める場合は多く、調査では平均年齢40歳で約4割に無痛性の椎間板ヘルニアを認めたとの報告があります。
また、線維輪断裂や椎間板膨隆はさらに多くの人でみられ、脊髄変形に関しても約3割に認められるといったことがわかっています。
この結果からも、LDHが極めて一般的な所見であることが明らかになっており、画像所見だけで障害を判定するのは困難としています。
脊椎(椎間板)の構造
脊椎には椎間板と呼ばれるクッションのようなものがあり、背骨にかかる荷重を分散する役割を持っています。
その椎間板が退行性変化にて膨隆することにより、後方に位置する硬膜(馬尾)や神経根を圧迫して様々な症状を引き起こします。
ちなみに、L2の高さで脊髄は終了し、馬尾(硬膜に包まれた神経根の束)へと移行します。
脊髄は中枢神経であるため、障害されると中枢性麻痺が起こりますが、馬尾は末梢神経なので障害されると末梢性麻痺が起こります。
中枢性麻痺 | 末梢性麻痺 | |
筋緊張 | ↑ | ↓ |
深部反射 | ↑ | ↓ |
病的反射 | + | - |
筋萎縮 | - | + |
筋線維束攣縮 | - | + |
馬尾は硬膜内に存在しており、健常者では、その配置は規則正しく並んでいることがわかっています。
前方の外側から順に上位の神経根が位置しており、後方の内側にいくに従って下位の神経根が位置します。
椎間板ヘルニアの神経根症状
腰椎椎間板ヘルニアは、L4/L5間(L5神経根障害)とL5/S1間(S1神経根障害)の発生が圧倒的に多いです。
そのため、以下にその代表的な症状をまとめます。
L4神経根 | L5神経根 | S1神経根 | |
腱反射 | 膝蓋腱反射↓ | 膝蓋腱反射→ | 膝蓋腱反射→ |
アキレス腱反射→ | アキレス腱反射→ | アキレス腱反射↓ | |
筋力低下 | 足部背屈,内反 | 足部背屈,足趾背屈 | 足部外反,足趾底屈 |
感覚障害 | 大腿前面から下腿内側 | 下腿外側から前足部 | 足底から下腿後面 |
分類①:傍正中ヘルニア
最も多い腰椎椎間板ヘルニアのタイプで全体の約8割を占めています。
椎間板の後方は後縦靭帯によって保護されているので、真後ろに髄核が飛び出すことは少なく、ほとんどはその傍から飛び出すことになります。
その状態を傍正中型ヘルニアと呼んでおり、方向的には斜め後方に飛び出した状態で、L5/S1レベルではS1の神経根を圧迫します。
外側型ヘルニアのように椎間関節部分で挟み込まれることはなく、後方にスペースが残っているために強い圧迫を受けることはありません。
そのため、疼痛は自制内である場合が多く、椎間板内圧を高める姿勢を継続することで症状が悪化していきます。
分類②:正中ヘルニア
二番目に多い腰椎椎間板ヘルニアのタイプで全体の2割弱を占めています。
椎間板の後方は後縦靭帯によって保護されていますが、膨隆した椎間板によって後縦靭帯ごと後方へ押し出された状態になります。
そうすると後方に位置する硬膜を前方から圧迫するような力が加わり、脊柱管が狭窄している場合は馬尾障害をきたすこともあります。
正中型ヘルニアは髄核よりも線維輪の膨隆が原因であるため、他のヘルニアと比較して吸収されづらく、治りにくい傾向にあります。
そのため、すでに膀胱直腸障害などの馬尾障害が発生しているケースでは、早期の手術が必要となります。
後縦靭帯を突き破って髄核が外(脊柱管)に飛び出してしまった状態を穿破脱出型ヘルニアとも呼びます。
穿破したあとはこれまで圧迫を受けていた硬膜が解放されるために、それまでの重苦しい痛みが一気になくなります。
また、飛び出した髄核は吸収されやすいため、その後は症状が緩解するケースが多いといわれています。
ただし、飛び出したヘルニアが脊柱管内に詰まってしまうこともあり、その場合は詰まった場所より下位の神経はすべて麻痺するため、脊髄損傷に類似した症状をきたします。
ヘルニアの症状を繰り返し、椎間板に負担のかかるような力仕事をしている場合に発生しやすいと考えられます。
分類③:椎間孔内外側ヘルニア
発生頻度としては少数ですが、最も症状が強いタイプのヘルニアです。
外側型ヘルニアは神経が最も強く絞扼されるために、神経に炎症が起きやすく、そこに刺激が加わることで激痛を訴えるのが特徴です。
通常、神経を圧迫されて起こるのは感覚障害や筋力低下ですが、神経に炎症が起きている場合は痛みが起きることがわかっています。
L5/S1レベルの椎間板ヘルニアにおいて、傍正中型はS1の神経根が障害されるのに対して、外側型はL5の神経根が障害されます。
外側型ヘルニアは髄核が飛び出しているために吸収されやすく、症状がおさまりやすい型ではありますが、激痛のために手術を希望する患者が多いです。
神経根を強く圧迫しているため、神経支配領域に限局した知覚障害や筋力低下などが起こります。
分類④:椎間孔外外側ヘルニア
発生頻度としては少数であり、椎間孔内外側ヘルニアと比較して症状が乏しいタイプのヘルニアです。
椎間孔で強く絞扼されることがないため、神経は後方に逃げることができ、あまり強い神経症状はきたしません。
L5/S1レベルの椎間板ヘルニアにおいては、L5神経に障害が現れます。
分類⑤:椎体内型ヘルニア(シュモール結節)
一般的に椎間板ヘルニアは後方に突出しますが、稀に椎体内に飛び出していくことがあり、それをシュモール結節と呼びます。
椎体と椎間板の間には軟骨終板が存在していますが、その軟骨終板に亀裂が入り、椎間板内の成分が椎体内に漏れ出すことで起こります。
痛みの性質は椎間板障害にちかく、主症状は腰痛であり、硬膜や神経根を圧迫してはいないので神経症状はありません。
椎間板内圧を高める姿勢で腰痛は悪化し、長時間の座位が困難となるといった訴えが聞かれます。
MRI画像では素人が見てもはっきりと問題部位がわかりますが、単純X線画像では特定が難しい場合も多いです。
ただし、しっかりと見ていくとレントゲンでも椎体が削れてることが微かにわかりますので、見落とさないように注意が必要です。
手術の適応と効果
保存的治療が奏功せずに3ヶ月以上症状が継続する場合や、馬尾障害が認められる場合は観血的治療(手術)の適応となります。
手術に至る症例は全体の10-30%で、再発率は術後10年で3-8%とされており、最適な椎間板切除量などについては一致した見解はみられません。
保存的治療と観血的治療の予後を比較すると、短期的な臨床成績は観血的治療が優れていますが、長期成績や復職率には大差がないようです。
手術①:直接的椎間板ヘルニア切除術
最も一般的な方法で、直接的にヘルニアを除去する手術です。
手術方法には、LOVE変法による直視下手術、内視鏡下摘出術、顕微鏡視下摘出術などがあります。
直視下手術では、皮膚から傍脊柱筋までを4-5㎝ほど切開し、さらに椎弓の一部と黄色靱帯を切除して脊柱管に到達します。
そこから硬膜と神経根を確認しながら剥離操作を行い、さらに奥にあるヘルニアを摘出していきます。
直視下では、内視鏡や顕微鏡下と比べて直接的にヘルニアを確認できるので、剥離操作が行いやすいのが特徴です。
しかし、手術侵襲が大きいので感染症のリスクが高く、侵襲された組織(とくに筋肉)が瘢痕化して術後腰痛の原因となります。
内視鏡手術では、切開は1.5㎝ほどと低侵襲であり、間接的ではありますが鮮明な画像を見ながら剥離操作が行えます。
低侵襲のために術後痛や感染症のリスクは減りますが、手技の習得には一定の経験を要します。
手術②:経皮的髄核摘出術
経皮的髄核摘出術(PN法)は、局所麻酔下にて椎間板の後外側から内径約5㎜ほどの器具を挿入し、椎間板内の髄核を摘出していき、間接的に内圧を減らす方法です。
飛び出している髄核部分を取り除くわけではありませんが、全体的な圧が低下することで一定の効果が期待できます。
手術③:レーザー蒸散法(椎間板減圧術)
レーザー蒸散法は、椎間板の髄核を蒸散させることにより椎間板内圧を減少させ、神経根への圧迫を減らす方法です。
経皮的髄核摘出術と同程度の効果が得られるとされていますが、隣接椎体の骨壊死や熱による神経根損傷などのリスクが伴います。
手術をしても痺れがとれない理由
術後1-2週間は、圧迫や癒着によって生じた神経の炎症が残存しているため、殿部痛や下肢痛といった疼痛が持続する場合は多いです。
それ以降になると脊柱起立筋や多裂筋の瘢痕化により、腰痛が残存し続けるような場合が多いので、早期の介入が必要とされています。
術後に麻痺が増悪する場合は、①術中の神経損傷、②術中に神経根を内側牽引する操作での神経損傷、③術後血腫による神経圧迫などが考えられます。
上記は手術による合併症の観点からですが、実際は術前の神経状態のほうが術後の痺れの原因としては大きいです。
手術をすることで神経絞扼がなくなり、痛みは劇的に改善しやすいですが、しびれなどの麻痺症状は治りにくいことが多いです。
理由としては、長期の圧迫により神経がすでに不可逆的な変化を起こしている可能性や、そもそも問題点が別部位にあった可能性が考えられます。
とくに梨状筋症候群による坐骨神経痛は椎間板ヘルニアと間違われやすく、そのまま手術に至るケースも多いようです。
ヘルニアが自然治癒する過程
腰椎椎間板ヘルニアが自然治癒することはよく知られていますが、飛び出した髄核などが自然縮小する機序はいまだ明らかにされていません。
しかし、ヘルニア塊の辺縁に新生血管を伴う肉芽組織の形成とマクロファージを主とした炎症反応が起こることから、吸収には貪食作用が関与していると考えられています。
線維輪や軟骨終板よりも髄核に強い吸収反応は起こりやすく、線維輪から脱出した髄核は約3ヶ月ほどで消失するといわれています。
ヘルニアで腰痛は起こるのか?
ここまで読んでくれたのなら理解もしやすいかと思いますが、重要なのはヘルニアがどの組織を圧迫しているかです。
神経根のみを圧迫しているなら基本的に腰痛は起こらず、下肢の知覚障害や筋力低下などの神経症状が主となります。
しかしながら、硬膜や後縦靭帯などを圧迫している、または椎間板の線維輪表層が損傷している場合は腰痛が出現します。
これらの組織は脊椎洞神経の支配を受けており、この神経が障害を受けると腰の中心に痛みを訴えることになります。
腰痛が片側性である場合は、椎間関節障害または筋筋膜性腰痛症のどちらかである可能性が高いです。
リハビリテーション方法
- 生活指導
- 脊椎伸展運動
- 骨盤後傾の矯正
- 神経の滑走性改善
- 脊椎の可動性制限
- 重心線の調整
- 牽引療法
腰椎椎間板ヘルニアの生活指導
生活指導で最も重要なのは、椎間板内圧を上げるような動作は避け、なるべく同じ姿勢をとり続けないように注意することです。
デスクワークの場合は座位が多いですが、座った姿勢は骨盤が後傾しやすく、いわゆる仙骨坐りとなります。
椎間板内圧の部分でも書きましたが、座位(とくに仙骨坐り)は椎間板への負担が大きくなりますので、骨盤を立てて座ることが大切です。
また、30分に1回は腰を動かすようにして除圧し、負担が集中しないように指導します。
脊椎伸展運動の方法
マッケンジー体操(脊椎伸展運動)は即時的な効果を認める文献は多くありますが、長期的な効果を認める文献はほとんどありません。
しかし、内容が簡単でひとりでも取り組めるため、ホームエクササイズとしては非常に有効な手段です。
椎間板ヘルニアが改善(吸収)されるまでの間、在宅での疼痛コントロールの手段として活用することができます。
実施の際には、しっかりと下部腰椎(障害レベル)の伸展動作が出るように、腰のたわみを重視しながら指導していくことが大切です。
骨盤後傾の矯正トレーニング
通常、腰椎は前方に緩いカーブ(前弯)を持っており、脊椎全体としてはS字のような弯曲構造をとっています。
そうすることで椎間板にかかる負担を減少させていますが、腰椎の前弯が減少している人(平背)では、うまく圧を逃がすことができません。
そして結果的に椎間板内圧を高めることにつながり、椎間板ヘルニアを助長させているケースもあります。
腰椎は骨盤と連結しており、骨盤が後傾している人ほど腰椎の前弯は減少している傾向にあります。
そのため、骨盤後傾を矯正するトレーニングにて、生活上で椎間板にかかる負担を減らすことも有用です。
骨盤を前傾させる筋肉は、①脊柱起立筋、②大腿直筋、③腸腰筋であるため、これらの筋肉を強化していきます。
また、骨盤後傾を強める腹直筋や大殿筋、ハムストリングスは緩めるように調整します。
筋トレ①脊柱起立筋
脊柱起立筋は8つの筋肉から構成されており、①頸腸肋筋、②胸腸肋筋、③腰腸肋筋、④頭最長筋、⑤頸最長筋、⑥胸最長筋、⑦頸棘筋、⑧胸棘筋があります。(下の画像は腰腸肋筋)
骨盤後傾を矯正する上で最も重要なのが脊柱起立筋の強化です。この筋肉が弱化している場合は、圧迫骨折や椎間板の損傷をまねく原因となります。
筋力トレーニングの方法として、腹臥位での上体反らし運動があります。高負荷の運動であるため、必要に応じて肘や腕で補助しても構いません。
筋トレ②:腸腰筋
腸腰筋は骨盤前面深層に位置する筋肉で、①大腰筋、②腸骨筋、③小腰筋の総称です。
腸腰筋は脊椎にも付着部を持っているため、収縮することで腰椎前弯を直接的に増強することができます。
腸腰筋をトレーニングする方法として、下記のように重錘と骨盤ベルトを利用した腰椎前弯下での運動方法が有用です。
重錘の重さは腰ベルトが3-5㎏、足部が1-2㎏程度にて実施することが推奨されます。
筋トレ③:大腿直筋
大腿直筋は大腿四頭筋の中で唯一の二関節筋であり、股関節屈曲にも働きます。そのため、骨盤の前傾にも作用します。
大腿直筋の筋力トレーニングで猫背を修正する作用はほとんどありませんが、短縮にて骨盤を前傾位に引っ張っている場合が度々みられます。
筋力トレーニングの方法として、背臥位にて下肢伸展位で挙上していきます。この方法では、腸腰筋も同時に鍛えることができます。
ストレッチ①:腹直筋
腹直筋は体幹を屈曲させる主力筋であり、収縮することで骨盤は後傾方向に誘導されます。
腹直筋の短縮にて骨盤後傾をきたしているケースはほとんどいませんが、可能性のひとつとして確認しておくことは大切です。
ストレッチ方法として、うつ伏せで腰を床につけたまま、床に両手をついて上体を起こし、前を向きます。腹部の筋肉が伸ばされているのを感じながら実施してください。
ストレッチ②:大殿筋
大殿筋は人体最大の単一筋で、名前の通りに殿部に付着しています。
大殿筋の短縮もあまり見られることはありませんが、骨盤に影響を与えている可能性があるのでチェックします。
ストレッチ方法として、座って両脚の裏を合わせ、背中を真っ直ぐにしたまま上体をゆっくりと前屈します。
ストレッチ③:ハムストリング
ハムストリングは大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋にて構成されており、大腿後面に位置しています。
ハムストリングは短縮をきたしやすい筋肉であり、膝関節の屈曲拘縮に伴って骨盤を後傾させる原因となります。
ストレッチ方法として、つま先を外側に向けて両脚を広げて座ります。両膝を曲げて上体を前傾し、両手で両膝を外側に向かって押します。
神経の滑走性改善
圧迫や絞扼にて神経根や周囲組織に炎症を起こしている場合、軽いメカニカルストレスでも強い痛みを訴えることになります。
飛び出した髄核が吸収されたあとは徐々に炎症は治まっていきますが、治癒後は周囲組織に瘢痕拘縮が残ります。
そうすると神経の滑走性が障害されてしまい、SLRテストといった神経を伸張する検査で痛みを訴えることになります。
瘢痕拘縮を改善するためには神経を滑走させることが必要ですが、炎症が残っている時期に行うと痛みを助長するために注意が必要です。
基本的には除圧術を実施した後や、髄核が吸収されたと判断された場合に、痛みの状態をみながらアプローチしていきます。
方法としては、L5の神経根を伸ばしたい場合はSLRテストの肢位で実施し、伸張と弛緩を繰り返しながら滑走させます。
痛みが強い場合は下肢の位置をやや下方で止めて、足関節を底背屈させながら動きを促していきます。
脊椎の可動性制限(テーピング治療)
椎間板ヘルニアのある脊椎レベルの可動性を制限することにより、炎症を起こしている神経根への圧迫を除去します。
方法は装具療法(コルセット)やテーピング治療がありますが、ここでは後者について解説します。
まずは画像検査や神経テストにて問題となっている椎間板レベルを特定し、その後に障害部位の屈曲動作を抑制するテーピングを行っていきます。
下図の黄色い○部分が障害部と仮定すると、上下から障害部の皮膚を引き離すようにしながら貼付していきます。
テープは伸縮性があるものを選ぶようにし、15%ほど引き伸ばしてから貼ると効果的です。
重心線の調整(足底板の使用)
ハイヒールのように踵が上がっている靴を履いた場合、体重をつま先で支えるようになるために重心が前方に移動します。
そうすると、前方に移動した重心を後方に戻そうとして脊柱起立筋が働くようになり、腰椎前弯を増強させるように誘導することができます。
ただし、慣れないうちは膝関節を屈曲させてバランスをとるため、反対に骨盤が後傾してしまうこともあるので注意が必要です。
ハイヒールは腰に悪いとよく言われますが、このことからもわかるように、必ずしも腰に悪いというわけではありません。
大切なのは、その人に合うか合わないかを見極めてから使用することです。
牽引療法の効果
一般的に牽引療法の効果は、①椎体間や椎間関節の離開、②周囲軟部組織の伸張、③筋スパズムの低下、④血流の改善などが挙げられます。
その中で重要なのは「①」の椎体間の離開であり、ここは徒手的にアプローチすることができないので、脊椎牽引のポイントになると思います。
椎体間を離開するにはスプリット・テーブルを使用した場合でも45㎏の牽引力が必要とされており、大きな負荷をかける必要があることがわかります。
実際にはそこまで強い牽引力で実施することはほとんどありませんが、しっかりと伸ばすことで椎間板の整復に期待ができます。
おわりに
治療効果が期待できるリハビリテーション方法を中心にいくつか紹介していきましたが、いまだに椎間板ヘルニアに対してエビデンスが確立した運動療法は示されていないのが状況です。
なので、画一的な運動プログラムを組むのではなく、患者の症状に合わせてメニューを選択肢し、その都度の状態変化を評価しながら治療は勧めていってください。
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